久保研究室

ポスト「京」萌芽的課題「基礎科学の挑戦」

東北大学久保研究室(マルチフィジックス・マルチスケールシミュレーション)では研究室見学、相談を随時受け付けています。

マルチフィジックス計算科学

   世界的に早急な対策が求められているエネルギー・環境問題の解決、さらには安全・安心社会の実現のためには、燃料電池、太陽電池、クリーンエネルギー、マイクロマシン、トライボロジー、電気自動車、航空・宇宙機器、発電プラント、水素ステーション、エレクトロニクスなどの多様な研究分野において、先進的な超精密・超小型化システムの開発、革新的な高機能・高性能材料の開発が強く求められています。
   世界に先んじた次世代システム技術・材料技術を創造するためには、電子・原子レベルでの構造、化学反応、流れの制御からμメートル・センチメートルレベルでの機能・特性制御までの総合的なシステム設計・材料設計の実現が必須とされています。特に、超精密化・超小型化・超微細化が急速に進む近年のシステム技術・材料技術は、「摩擦、衝撃、応力、流体、光、電子、熱、電場、磁場、化学反応」などが複雑に絡み合ったマルチフィジックス現象プロセスであるため、電子・原子レベルでの構造・化学反応・流れの理解やマクロレベルでの機能・特性の理解のみならず、上記の多様な現象が複雑に絡み合ったマルチフィジックス現象の深い理解が不可欠となってきています。これに対し、従来の機械工学は機械力学、材料力学、流体力学、熱力学を基礎として、巨視的あるいは連続体としての取り扱いを中心として発展してきたために、電子・原子レベルでのマルチフィジックス現象がマクロスケールでの機能・性能に大きな影響を与える現在の最先端テクノロジーには対応できていないことが、様々な研究分野で指摘されています。そこで久保研究室では、第一原理分子動力学シミュレーションやSCF-Tight-Binding分子動力学シミュレーションに基づき電子・原子レベルで「摩擦、衝撃、応力、流体、光、電子、熱、電場、磁場、化学反応」などが複雑に絡み合ったマルチフィジックス現象を解明可能なマルチフィジックス計算科学シミュレーション技術の開発を推進しています。

   さらに、電子・原子レベルの第一原理分子動力学シミュレーションやSCF-Tight-Binding分子動力学シミュレーションと、連続体力学に基づくマクロスケールシミュレーションとの融合を実現することで、(1)エネルギーシステム分野、(2)トライボロジー分野、(3)マイクロマシン・エレクトロニクス分野、(4)発電プラント分野などの広範な研究領域において、電子・原子レベルのマルチフィジックス現象の制御により、マクロスケールでの革新的・先進的な機能・性能・特性を実現するという、マルチフィジックス計算科学のブレイクスルーを実現することを目標としています。さらに、これらの新規シミュレーション技術を、燃料電池、太陽電池、クリーンエネルギー、マイクロマシン、MEMS、トライボロジー、電気自動車、航空・宇宙機器、発電プラント、水素ステーション、エレクトロニクス、ディスプレイ、発光・レーザー素子、環境触媒、光触媒などの多様な系に応用することで、エネルギー問題・環境問題の解決、安全・安心社会の実現、さらには日本発の新産業の創出に向けて大きく貢献することを目指しています。

研究テーマ

エネルギーシステム分野

   次世代エネルギーシステムとして期待される燃料電池は、機械工学、連続体力学、電気化学、表面科学、触媒化学、化学工学などの総合技術であり、ナノ材料の機能・性質がマクロスケールでの電池性能、寿命特性に大きな影響を及ぼす顕著な例です。そのため、燃料電池の設計・開発には、「化学反応、電位、拡散、流体、電子伝導、熱伝導」などが複雑に絡み合ったマルチフィジックス現象の理解が不可欠となっています。また、自動車用電源として期待されている固体高分子形燃料電池が抱える問題は、触媒活性、金属の溶出、酸素拡散、水の滞留、温度分布など、電子レベルからマクロレベルまで幅広いスケールに及んでいます。さらに、燃料電池に限らず、太陽電池、自動車用二次電池などにおいても、同様に電子・原子レベルからマクロスケールまでのマルチフィジックス現象の深い理解が不可欠であることが指摘されています。
   そこで久保研究室では、第一原理分子動力学シミュレーションから連続体力学シミュレーションまでの幅広いシミュレーション技術を統合することで、「エネルギーシステム分野」において電子・原子レベルでのマルチフィジックス現象の深い理解に基づくマクロレベルの機能設計・システム設計が可能なマルチフィジックス計算科学シミュレーション技術を確立することを目標としています。さらに、新規シミュレーション技術を活用して、燃料電池、太陽電池、二次電池などの中で起こるマルチフィジックス現象を解明することで、多様なエネルギーシステムにおいて高精度かつ高速なシステム設計・材料設計を実現させることを目指しています。

トライボロジー分野

   トライボロジーは航空・宇宙機器、自動車、ハードディスクなど分野を超えた多岐にわたる技術のカギを握るキーテクノロジーです。一方で、自動車をはじめ様々な工業製品の中で起こる摩擦によるエネルギー損失、コスト損失は国民総生産(GDP)の3%とも言われており、摩擦によるエネルギー損失を低減させることが、エネルギー問題の解決に重要な役割を果たします。この問題に対し、これまで機械工学分野では、連続体力学を活用することで、固固界面、固液界面における摩擦挙動シミュレーション、摩擦環境下での流体挙動シミュレーションなどが広く行われてきました。しかし、最近では摩擦環境下での潤滑被膜の形成や潤滑被膜による摩擦の低減、苛酷な環境下で使用される潤滑被膜の分解や劣化など摩擦環境下における電子・原子レベルでの「摩擦、応力、流体、熱、化学反応」を含むマルチフィジックス現象の理解が重要課題となっています。
   そこで久保研究室では、第一原理分子動力学シミュレーションから連続体力学シミュレーションまでの幅広いシミュレーション技術を統合することで、「トライボロジー分野」において電子・原子レベルでの上記マルチフィジックス現象の理解に基づくマクロレベルの機能設計・システム設計が可能なマルチフィジックス計算科学シミュレーション技術を確立することを目標としています。さらに、新規シミュレーション技術を活用して、航空・宇宙機器、自動車、ハードディスクの中で起こるマルチフィジックス現象を解明し、多様なトライボロジーシステムにおいて高精度かつ高速なシステム設計・材料設計を実現させることを目指しています。

マイクロマシン・エレクトロニクス分野

   次世代の超精密かつ超小型化マイクロマシン・MEMSや高性能・超高速エレクトロニクスデバイスの創製を目標として、精密加工プロセス・微細加工プロセス・製造プロセスのダウンサイジングが最重要課題となっています。その実現には、微細構造を形成するためのプラズマエッチングプロセス、ケミカルメカニカルポリッシングプロセス、リソグラフィープロセス、化学気相成長プロセス、洗浄プロセスなどに対する電子・原子レベルでの理解が強く求められています。しかし、マイクロマシンやエレクトロニクスデバイスの精密加工プロセス・微細加工プロセス・製造プロセスでは、「衝撃、応力、摩擦、流体、光、熱、化学反応」といった従来の連続体力学に基づく機械工学シミュレーションでは考慮されてこなかった要素が複雑に絡み合ったマルチフィジックス現象を同時に扱う必要があるため、その理論的検討は全く行われてきませんでした。
   そこで久保研究室では、第一原理分子動力学シミュレーションから連続体力学シミュレーションまでの幅広いシミュレーション技術を統合することで、「マイクロマシン・エレクトロニクス分野」において電子・原子レベルのマルチフィジックス現象の深い理解に基づくマクロレベルの機能設計・システム設計が可能なマルチフィジックス計算科学シミュレーション技術を確立することを目標としています。さらに、マイクロマシン、MEMS、エレクトロニクスデバイスなどの精密加工プロセス・微細加工プロセス・製造プロセス中に起こるマルチフィジックス現象を解明し、超精密かつ超小型化マイクロマシン・MEMSや高性能・超高速エレクトロニクスデバイスの創製に向けて高精度かつ高速なシステム設計・材料設計を実現させることを目指しています。

発電プラント分野

   安全・安心社会の実現、エネルギーの恒常的な供給の実現のためには、世界中に数多く存在する発電プラントにおける継続的な安全運転・無事故の実現が強く求められています。これに対し、昨今の発電プラントにおける多くの破壊事故、き裂発生事例は、力学的な破壊・劣化挙動の理解のみならず、応力腐食割れや水素脆化割れなどの応力場、流体場における電子・原子レベルでの化学反応を含むマルチフィジックス現象を解明する必要性を強く示唆しています。しかし、機械工学分野で従来から活用されてきた連続体力学に基づくマクロスケールシミュレーションでは、このような電子・原子レベルでのマルチフィジックス現象を取り扱うことは不可能であるため、応力腐食割れや水素脆化割れに対する理論的な検討は全く行われてきませんでした。
   そこで久保研究室では、第一原理分子動力学シミュレーションから連続体力学シミュレーションまでの幅広いシミュレーション技術を統合することで、「発電プラント分野」において電子・原子レベルのマルチフィジックス現象の深い理解に基づくマクロレベルの機能設計・システム設計が可能なマルチフィジックス計算科学シミュレーション技術を確立することを目標としています。さらに、発電プラントの中で起こるマルチフィジックス現象を解明し、安全・安心社会の実現、エネルギーの恒常的な供給に向けて、高精度かつ高速なシステム設計・材料設計を実現させることを目指しています。